狐尾幻想樹海紀行EX その2

公式が愛と勇気と音楽のファンタジー()に突っ走っている裏でサツバツとした焼肉定食弱肉強食の世界へ向かってレディ・ゴー!させてる狐野郎がいたらしい
 ―キツネバッハ叙事詩 第三三四億章序文より


というわけでまだまだ序章みたいな話です。
正直PT編成的にも他に苦戦する要素がないのでこれで星喰サンドバッグに出かけてもいいんじゃねみたいな感じになってます。まり花がスイーツ()魔法で星喰を手懐ける未来が見える?HAHAHA何を言ってるんだいボブ

サーキストとかその筋には有名な不穏な単語もいくつか出てきてますが俺自身が一体何をしたいのか状態です。要はいつもの如く目についたものを片っ端から鍋にぶち込んでみる系の闇鍋モードです。多分見た目が滅びてる何かになるんじゃないスかね(ハナホジ
あとどうでもいい話ですが、現在ひなビタ主要メンバーは高校卒業を控えてる(公式設定、っつーか凜はすでに卒業生では)みたいですがこちらにおいては未だに高校二年生と言うことでご理解いただければと思います。早苗さんは高校何浪した扱いなんだろな

あと相変わらずねこはいます。よろしくおねがいします。メモ



君はこの先を読み進めてもいいけどなんかもういいや勝手にしてくれ(なげやり















画像


「ほう、お前達も狐尾の一員とはな。
確かに一人見覚えのある顔ではあるが…まあ、お前達は見た目や雰囲気では量れぬようなものを持っているからな。
…それが、態々ここを訪ねてきたということは、私の依頼を受けるのがお前達だ、という認識でいいのか?」

重厚なフルフェイスの兜で表情はわかりにくいが、ギルド長エドガーは深く嘆息する。
感心しているのか呆れているのかまでは解らないが、後者と受け取ったらしい穣子がまるでチンピラめいた表情で絡み始めるのを早苗が宥める。

「ああんいい度胸してんなおっさんいいかこの私はなあ」
「穣子さん抑えて抑えて。
ま、まあそういうことでして…えっとギルド長さん」
「…エドガーで構わん。
何、こちらも野暮用といえば野暮用だ。ただし私自身のではない、私の妻の案件なんだがな」

そう言ったエドガーの表情は相変わらずわかりにくいが、声の調子から何かしら後ろめたいものを感じるのは気のせいだったのだろうか。
あえて気にしない風を装い、早苗は先を促した。

うちには…というか、私の妻がな、ブレッジという名のネズミを一匹飼っている。
ネズミというにはまあ…多少巨大ではあるが、些末な問題だろう。私にとっても家族なのだからな」
「はあ、兎に角おっきいネズミさんなんですね」
「うむ。
ネズミという生き物は兎に角なんでもよく齧る。
私も…私の妻も最近知ったのだが、奴らの歯は齧るモノがないと伸び放題になってしまってな…しかも彼奴め、最終的に喰えるものでもないと一切口にしようとせぬのだ。
しかも面倒なことに、少しでも脆いモノがあれば鋭いあの歯で噛み切ってしまう。先日ついに私の愛用していた釣り竿を…まあそれは良い、このまま歯が伸び続ければ彼奴もモノが喰いにくくなって困ることだろう。
なので…お前達には奴が齧るのに丁度いい堅さの木の実…正確には、それを模した魔物のカラを持ってきて貰おうかと思ってな」
「へえ~…飼ってるネズミさんの為を思ってなんですね~」

理解してるのかしていないのか、素直な感想を投げるまり花に苦笑するのか、あるいは照れ隠しのつもりなのかは(しつこいようだが)窺えぬ表情のまま、エドガーは続ける。

「しつこいようだが、あくまで困っているのは彼奴と、その飼い主である私の妻だからな。
まあ、それはいいだろう。
第五階層「円環ノ原生林」に、アイアンドングリというあまりにそのままなドングリの魔物がいる。
そいつの殻であれば、ブレッジの奴めも口にすることだろう」
「あ、えっとちょっと待って…エドガーさん。
確かこの入ってすぐの森にも、ドングリみたいな奴いた気がするんだけど…」

一舞の問いに、エドガーは嘆息しながら頭を振る。

ブレッジの奴めの牙をもってすれば、お化けドングリ風情では最早相手にならん。
まあ、そういうことだ」
「えーそれってそのブレッジって奴、もう半分ぐらい魔物なんじゃ」
「穣子さんストップストップ^^;
…解りました、第五階層のアイアンドングリ…ですね」
「わりと数多くいる魔物で、単独では然程恐ろしい奴ではない。
ただ、ひたすらに全ての攻撃に対して守りが堅く、なおかつ自ら自爆して石化の呪いをかけてくるそうだ。
そのことを留意しておくといい」
「えーそれって自爆されたら即hage案件めう…?」
「あー…この世界ちょっと石化の仕様が違うからまあ多少は」

何時の間にか自分の存在を余所にわいわいと騒ぎ出す少女の集団を見て…エドガーは内心不安を覚えざるを得ずにいた。



-狐尾幻想樹海紀行エクシーズ-
その2 「ロンゲスト・デイ・オブ・アイオリス ~ CKP添え」



てゐ「よっす、どうも」
諏訪子「なんだその、ラーメン三銃士のオチ担当みたいなアイサツは」
てゐ「そんなのは気にしなくてもいいこっちゃないかな。
  というわけで今回オープニングに持ってきましたのはクエスト「鋭き刃、研ぐものは」だよ。
  タイトル的にはマリオンさんの三連チャンクエストっぽくも見えるけど」
諏訪子「もうネズミが絡んだ時点であまりいい予感がしないのが世界樹クオリティ…ということか?
   実際これもしょうもないといえばしょうもないというか」
てゐ「お前カミさんいたんかい!とか、そのネズミの飼い主実はお前だろう!みたいなツッコミも多数あったとかなかったとかそんな感じだね。
  ちなみにエドガー、年頃の娘さんもいるらしいぞ。通常会話でそれっぽい発言してるな」
諏訪子「マリオンみたいな暗い過去がないらしいどころかごく普通のマイホームパパだったという衝撃の事実」
てゐ「サツバツとした樹海探索に関わる職業人にもかかわらずそれとかパワワードにも限度ってあるよな。
  まあこのクエストはどこかのファッキン糸目のと違って至極簡単、アイアンドングリを一匹狩れば決着がつく。まあ五層にもなると普通なら通常ドロップもしづらくなってくるところだが」
諏訪子「ドロップカメオを常備してると忘れがちになるところではあるがな。
   前回触れ忘れたけど、ドロップカメオは条件付き以外のドロップ確定取得にLUC+20、グロースバッジはPTの取得経験値3倍にWIS+20。装備効果の能力補正だけでも一級品のシロモノだな。
   ついでにそれぞれの取得クエスト、当然何度も受けられる上に前者は到達階層に応じた莫大な金が、後者には聖なる贈り物に階層に応じた莫大な経験値も報酬についてくる」
てゐ「露骨な救済案どころの話じゃねえな。
  まあSSQ2にも新芽クエストとかあったけどさー」
諏訪子「流石に不評だったのかDLCボスとかそういうの今回いないみたいだから、クリア後はとかくやることが少なくてな。
   茶番で水増ししてでも行かない限りはやることも速攻で終わっちまう。
   メタい話すると、実際これ書いてる時点であとは裏ボスだけしか残ってねえし」
てゐ「ひどい話だな。
  で、このアイアンドングリに関しては」
諏訪子「五階層すぐに出てくる、やたらとダメージ属性全体の耐性が高くて異常耐性がザルな奴だ。
   HPも400くらいしかないから、適正域で毒入れれば毒ダメで簡単に沈められるな。レアドロもねえし、こいつらだけ単独で出てきてるんだったら軽く殴ればすぐ身構えて次のターン自爆してきやがるし、今作の石化仕様で全員石化してもhageにはならんからむしろ自爆させた方が手っ取り早いかもな」
てゐ「例によって上の階に行けば面倒な奴と組んで出てきたりとかそういうオチか」
諏訪子「第一階層のイノシシとドングリも合体攻撃をしてくるだろ?
   あとは察してくれ」
てゐ「デスヨネー(´・ω・`)」








画像


【システムウインドウ】エドガーさんにアイアンドングリの殻を渡しました

エドガー「どうやら目当てのものを手に入れてくれたようだな。
    …ふむ、やはり並みの硬度ではない…これであれば、奴の歯の伸びを気にすることはなくなるだろう。
    まったく、世話のかかる奴だ」
一舞「結局エドガーさんも気にしてるんじゃないですかー」
エドガー「…そう、妻がぼやいているだけだ。
    私にもお前達ぐらいの年頃の娘がいるが、流石にごく普通の町娘と変わらぬ。
    まだ冒険者として歴は浅いと聞くが、この程度の相手なら然程苦戦もしていないようなら…今度は正真正銘、私からの依頼を任せても良さそうではあるな」
めう「というかー、ギルド長が動けばいいんじゃないかめう?
  めう達の知ってるギルド長、結構自分で迷宮にのりこめー^^してるギルド長結構いるめう」
エドガー「別の世界の世界樹迷宮か。
    まあ、確かにそれも吝かではない。ただ、ここ数ヶ月は特に細かい案件が山積していたからな。
    お前達「狐尾」のせいでもあるがな、それも」
穣子「えーほんの昨日今日きたばっかの私たちのせいにされても困んだけどー」
早苗「まあまあ…やっぱり、頂を踏破されたとしても、それでもこの地を冒険しようとする新しい冒険者も多い…ということですよね?」
エドガー「そういうことだ。
    それはさておき、今回の件は感謝するぞ、狐尾。
    今回の報酬と…私からの案件に関しては、メリーナに全て預けてある。あのお節介焼きにも、宜しく伝えておいてくれ」





画像


一舞「なんだかんだで一番気にしてたの、エドガーさんだと思うんだけどねー
まり花「だよねー。
   あのドングリさん渡したとき、ものすごいうれしそうだったもんね」
めう「きっとあの兜の下はゆでゆでだこさんめう^^^」
メリーナ「ふふっ、あの人ああ見えて、とても家族思いだから。
    新顔の若い子達もわりと尻込みしちゃうから、そういう面もある人だってことをもっとよく知って貰ってもいいと思ってね。
    エドガーさん、あまり自分のことを表には出さないから、ね?」
穣子「でーも女将、ギルド長いってたよー?
  余計なことしやがってみたいな」
メリーナ「うーん…まあ、あとで菓子折持って謝れば、エドガーさんも許してくれるでしょ。
    …これに関してはまあ、あなたたちへの照れ隠しか何かかも解らないけど」
一舞「エドガーさんなんかいってたやつだよね…どれどれ」

その内容を一瞥した一舞が無表情のまままり花とめうに依頼書を押しつける…

依頼書に曰く
【晶洞の水晶竜を、可能な限り高速で討伐し得られる特殊な鉱石を持ってきて欲しい】

まり花「どういうこと?」
早苗「う…うーん…書いて字のごとくでは」
めう「流石に剣と魔法でファンタジーな世界めう…ドララはやっぱりいるめうか(しろめ」
穣子「えーまた三竜なのかよー?
  もうあいつらの顔ぶっちゃけ見飽きた(キリッ」

「どうもそういうわけではないみたいなんだがなー」

メリーナ「あら、相変わらず早いお帰りね。
    どう、首尾のほうは」
かごめ「考えてみればもっと低い階層にイノシシだの羊だのいたよな。
   わざわざ原生林まで行ったあたしをぶん殴ってやりたいわい(ワイルドボアとロストゴートの首どーん)」
一舞「∑( ̄□ ̄;)ひゃああああああああああああああああのイノシシだああああああああああああああああああああ!!?
めう「いぶぶが一撃でアイキャンフラーイ(強制)された奴めうな(しろめ」
穣子「えっなんなのこれなにやってきたのあんた」
かごめ「ああ、なんかブラニーの好事家がこういうの集めてるらしくてな。
   普通こういうのって自分がハントした奴を飾るものの気がすんだが…依頼人はいないか、まあいいや(首を収納)
   水晶竜の話だが」
早苗「そんな物のついでみたいにやり過ごされても困るんですけど…^^
  竜、というからにはそれなりに強力な魔物なんでしょう?」
かごめ「晶洞の主だ。
   翼を展開してブレスを吐くモード、翼をたたみ込んでの高速肉弾戦モードを切り替える厄介な奴だよ…まあ、三竜ほどトチ狂っちゃいねえな。
   ただ、あの洞窟の水晶から得られる魔力の精髄が実体を得たような存在だ。そろそろまた復活してるかも解らんね」
一舞「あのー…なんか聞いただけではいささかどんな奴なのかわからないんですけど」
かごめ「流石のあたしも一人じゃ手が余るなー。
   けど確か、あいつは翼を完全に封じてからなら特殊な素材が手にはいるんだが、高速撃破は聞いたことねえのが気になるが…おい早苗、今回ちとあたしと替われ。
   ちょっと気になるし受けに行くならあたし行くよ
一舞「えっマジですか!?」
めう「閣下同行なら心強いめう! 鬼に金棒さききにエレキめう!!
穣子「えーあんたコンセプト関係ないじゃん」
かごめ「こいつにはもっと厄介な性質あんだよ、あたしの方が相性いいんだ。
   つーわけだ」
早苗「は、はあわかりました」








諏訪子「水晶竜相手だとこのPT編成ならクッソ相性悪いな確かに」
てゐ「実際サナ達がやったしなこれ。
  タイムリミットは10ターン。お約束通り、クエスト受領と同時に水晶竜が復活するんだが
諏訪子「なんの問題もないと思うが」
てゐ「水晶竜撃破後、まずそのことをエドガーに報告しないとクエストクリアにならないんだなこれが。
  なので、水晶竜をぶちのめしたあとエドガーの所に行かずに依頼破棄してもう一度依頼を受けるか、わざと10ターン以上かけてクエスト失敗して依頼を受け直せば即復活するという小ネタがありまして」
諏訪子「何の意味があるんだそりゃ?」
てゐ「一応経験値稼ぎにはなるけど、ブラフマギリの量産?」
諏訪子「まあ燃息は強力なスキルではあるけど。
   虚弱黒霧併用でアームブレイク喰らわせても封じそんな入らないから水溶液推奨の気がしなくも」
てゐ「27Fから素材落とす奴出てくるけどまあ、六層はもうちょっと先で触れることにしましてと。
  実際この依頼の題目はエドガーの奴が考えた嘘で、この次に控えるクエスト…次回取り上げるオリファントが本命になるよ。
  エドガー的には水晶竜を10ターンでぶちのめせれば、オリファントをどうにかできるとかそんなことを考えてやがったみたいだね」
諏訪子「なんだかなあ。
   というか、ここで早苗を外した意味は」
てゐ「まあ今回もある意味案内役止まりなんで、オリファントまでは参加するけど」
諏訪子「なんのこっちゃだな」
てゐ「つーワケであとは軽く与太話を挟んで次に続くウサ(´ω`)」









~虹霓ノ晶洞最深部~


穣子「とまああっさり倒せたわけだけど…で、例のブツは何処よ?」
めう「うみゅ?
  おかしいめう…メタ的な話では10ターンかかってない気がするめうが…」
穣子「ええい探せ探せ!!これじゃただのただ働きだ!!><」
めう「合点承知めう!!><」


かごめ「まーあいつらはしばらく好きにやらせとくか。
   出会い頭ワンキルしてやってもなにもなかったし、エドガーのアホもなに考えてやがるんだかな」
一舞「えーもうすでにそこ試してんですか…(しろめ
  けど、何でまた急に?」
かごめ「別に他意はない。
   しかしあの連中が諦めて帰ってくるまでは少し時間もあるだろうし…少し、昔話でもするか。
   といっても時間的には今から五、六年程度前の話になるだろうが」


訝る二人の少女を伴い、かごめは少し離れた位置…広間の腰掛けるに丁度いい場所にまで来ると、座るように促し、自分は腰にくくりつけていた瓶を煽り始める。
微かに漂う独特の香りを理解できたなら、それが酒であることも窺えよう。

「あんた達、メンバーやここなつの連中以外だと早苗や愛子なんかと仲いいよな。
どう思ってる、あの子達のこと」
「どうって…」

言われた質問の意味を量りかね、まり花と一舞は顔を見合わせる。

「別に、なんかそんな特別には見えないよね。
その…早苗も愛子も、もう本当の意味での家族がいなくなったとか…そういう話は聞いたことあるけど」
「…うん。
私たちはお父さんもお母さんもいるけど…ふたりともあまり、そういうの気にして欲しくないみたいなの、わかるしね。
だから、私たちもあまり気にしないことにしてますよっ」

精一杯、笑顔でそう答えるまり花だが…薄々はその意味するところを気づいてしまっただろう。


ふたりは知っているのだ。
特に早苗が…この世界に来るきっかけになった、悪夢のような出来事のことを。

自分たちだって決して、順風満帆で生きてきたわけではない。
目も当てられないような大失敗を大舞台でやらかしたことだってある。
自分自身のありように迷い、何度も何度も投げ出して逃げ出したくなった日もあった。

その都度、お互いに支え合ってきた彼女たちにとっても…かごめの学園都市構想が始動し、新たな友達が増え…そこには様々な種族の者がいて、様々な境遇を生きてきた者がいて。
命がけの戦場をすでに知っている者が、隣にいることが…正確には、普段の彼女らが、驚くほどごく普通の少年少女であるというその現実が、途方もなく恐ろしいことにも思えていた。


中でも…自分たちよりも四つも年上の、下級生の彼女が辿ってきた凄惨な過去など、タチの悪い冗談にしか思えなかった。
それまで「友達」と思っていた者達から筆舌に尽くしがたい迫害を受け、彼らの手により家族を失い…そして、彼女は自らの手で…彼らの命を奪った。

時折見せる、深い悲しみを内包しながら…穏やかな笑顔を向ける彼女が、自分たちの想像もつかない世界を生きてきて…その全てを失って、新たな道を歩み続けていること。


そして…初めて自分達が彼女たちと知り合えたあの日…まり花はどういうわけか、俯瞰する瞳となってさくら野を目指す烈達を見ていた。
つぐみの境遇を知って、あまりに理不尽な理由によって、大人達の勝手な都合で命を狙われる彼女の境遇に、まっすぐな怒りの言葉を吐き出す少年の姿を。


だからなのだろう、彼女は早苗のことも…他の者達のことも深く理解することが出来たのだと思っている。
理不尽に全てを失なった彼女の、友達として。
そのことが、もしかしたら偽善であるかも知れない、と、心のどこかでそう思いながらも。


「そうか。
だったら、あたしからこれ以上何か言うのも無粋な話かもね。
…あの子は…あたしが幻想郷に来たばかりの頃…もっと今より、孤独だったんだ。
何処まで力になってやれるか解らなかったけど、放っておきたくはなかった。そのときに出来たのは、あの子がこれ以上壊れるのを、止めてやることしかなかった」


幻想郷も決して平和な世界ではなくなっていた。
あとで知った話だろうが、人界や幻想界から大きな「戦争」がなくなり、そこに至る「狂気」が、幻想郷に流れ込んで狂気の坩堝に陥ったこともあった。

早苗もまた、その被害者の一人であったことを、ふたりは知った。


そして、めうと共に動かぬ竜の亡骸の周囲をぐるぐると駆け巡りながら怒号とも奇声ともつかない叫びを上げる穣子を指して、かごめは続ける。


「早苗が立ち直れたのも、まあ概ねあの穣子(バカ)のおかげなんだろうけどな。
あいつは勢いだけの単細胞かもしれんが、あたし達がとうてい想像もつかないような長い間、人間達と泣いて笑って馬鹿やって…そして、多くの別れを見てきた神様だ。
夏休みのどの程度を過ごすか解らんが…まあフルで使い切るなら一年近くなるだろうし、あいつと一緒にいろんなモノを見てくるのも、いい体験になるんじゃないかって思う」
「…え、ちょっと、待って。
この世界って、まさか」

困惑する一舞に、かごめは今更のように「ああ」と、溜息を吐いて答える。

元のあたし達の世界の一日が、こちらではおおよそ十日ほどになるらしいんだ。
だから今帰れば、あんた達が来てからほんの数時間しか経過してない…あの日の昼ぐらいに出てきてんなら、多分今戻れば夕方ぐらいかな。
手続きはしてるんだろ? ここで半年くらい過ごしても、夏休みを半分ぐらいゆっくり過ごせるぞ。
ああ、いわゆる「逆浦島効果」で戻ってからしばらくは全身にひどい反動が出てろくすっぽ動けなくなるかも解らんが」
「うわあ…漫画みたいな話が現実にあるんだこのあたり」
「そういえば、メリーナさんが早苗ちゃんを見たとき、何年ぶりかって話してたけど…そういうことだったんだ」

そのとき、げんなりした様子のめうと穣子が、ようやく捜索を諦めたと見えてこちらに歩いてくるのが見える。

「あいつらもどうやら諦めたようだ…思ったよりは粘ってたな。
エドガーめ、なにを企んでやがるか知らんが」

かごめはふたりを促し、そしてふたりのほうへ軽口を叩きながら歩いて行く。
予想される内容の愚痴を吐き散らすその姿を見ながら、ふたりはお互いの顔を見ることもなく。

「…まるで、あたし達場違いな場所に、来ちゃったかもね」
「そう、かもね」

まり花は寂しそうに微笑んで、頷く。



「ねえ、イブ。
昨日の夜、話したこと…覚えてる?」
「んー?
ああ、まりかが死にかけていたときに、凜が助けようとしてくれた話?」
「うん。
それが本当にあった出来事なら…そのときもきっと、わたしは起きていたのか眠っていたのか解らないけど…他の人の声を聞いた気がするの。
…なんて言ってたのか、思い出せないけど…夢だったのかも知れないし、そうじゃないのかもわからない。
でも」

彼女はその手の中をじっと見つめ、続ける。


「今はもう思い出せない、その誰かから、そのときに何か貰ったような気がするんだ。
うまく言えないけど…とってもとっても、大切なモノを。
忘れちゃいけないもののはずなのに…忘れたくなんてないと思ってたはずなのに…!」



その掌の中に、頬を伝う雫が、ぽろぽろと流れ落ち、わずかに溜まっていく。
一舞はそっと、その肩を抱きしめて諭すように告げる。

「…無理しないで。
なんかよくわからないけど…まりかがそんな顔してたら、あたしだってつらくなるよ。
時間はいっぱいあるから、少しずつ思い出していけばいいよ。
…あたしたちは、ひとりじゃないんだから

その言葉に、脳裏をよぎる記憶の断片が重なる。
今は誰のものか思い出せない、青年の声が、それに重なる。


-こんなことをした俺が言う言葉じゃないけど…君に出会えて、良かった。
俺たちが奪おうとした君の未来を…その足しになるか解らないけど、俺の残り全ての命を…-



自分の手の中で失われた…「受け継がれた命」の感触を忘れぬように。


「…うん」


彼女はその手を、握りしめていた。
大切な「親友」の手と一緒に。





~魔女の黄昏亭 その日の深夜~


「なあ、さな姉。
あんたの危惧は…やっぱり三ヶ月前のあれか

すっかり人気もなくなったそのカウンターで、隣り合って静かに酒をあおる二人の姿がある。
先日の一件から、思うところあってか言葉少なくなっていた紗苗は、しばしの沈黙を挟んで深く溜息を吐く。

かごめはそれを肯定と受け取って、独り言のようにして続ける。

「異端信仰者(サーキスト)の連中がなにを意図してこの世界にやってきたのか、あんな異常なものをいくつも持って押し寄せたのか未だに解らんしな。
残った事実は「変容した四神」、そしてそれを含む一部強力な「異常存在(オブジェクト)」の影響を幾人も受けているというその事実。
美結や凜のように元々が強力な能力を有していて、それを知って御せることが出来ているのならまだしも」
「そのために、なにも知らない子達を「巻き込む」なんて、私は納得できないわ。
あの子達は…被害者なのよ…!」
「そうなんだけどな」

険しい表情の、押し殺したようなトーンの紗苗の声にわずかに眉を顰めるも、かごめは同じような溜息を吐いて続ける。

「率直に言おうか。
一舞(イブ)や咲子はともかくとしても、正直、まり花に仕掛けた記憶操作術式はほぼ限界だ。
遅かれ早かれ、あいつの封印は解け…そして「ガラクタに押し込められていた」はずの「青龍」は、あの子の精神世界を媒介に蘇る。

「白虎(コイツ)」はそそのかしてなどいないと言い張ってやがるが」

かごめは、握られた左手の甲…正確にはその上に鎮座する、白い猫めいた実体に視線を送る。
おおざっぱに猫の姿をし、人の眼を持つそれは、言いがかりだ、といわんばかりに目を閉じて頭を振ると、煙のようにかき消えた。

あの子は言葉振る舞いで思うよりもずっと頭のいい子だ。
遅かれ早かれ、その記憶がもたらすことの意味を、自分なりに受け入れてなんかしでかしてくるはずだ。

あの子が受け継いだ「詩譜」がもたらす強力な「空想具現化」をもってすれば…何をどうしでかせたとしても、気づいたときには手遅れにしかなってないんじゃないかと思うんだけどね。
忌々しいが、あのネコ野郎のほざきやがる通りにだ」
「そのために、随分と残酷な手段を選ぶのね」
あたしは、それが成せるのに何も出来ないままでいさせる方が余程残酷だと、そう思うよ。
それでもって何をするか、どんな未来を選択するか…あたしたちにできるのは、そのアドバイスぐらいのもんだろうがよ」

かごめは返事を待つことなく、席に対価を置いて立ち上がり、その場をあとにする。


紗苗はただ一人、その場に残ってなおもグラスを傾けていた。

「反吐が出るほどの正論だわ」

呆れる様にそう吐き捨てるも、その表情はわずかに微笑んでいた。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック